未完成交響曲

「マジ神ってないわ～」

男は呟いた。

2017年8月23日 広島vsDeNA ＠横浜スタジアム

広島5点リードで迎えた2回裏。DeNA戸柱の放った打球はライト後方へ伸びていく。ライトの鈴木、懸命に打球を追う。フェンス際でジャンピングキャッチ。場内に歓声が上がる。ところが鈴木は右足首を抑えて倒れこむ。

右足首骨折。今シーズンの復帰は絶望的。

今季はカープ不動の4番として大活躍していた“神ってる男”の離脱に全カープファンが悲しみに暮れた。

試合もこの3連戦すべて広島の逆転サヨナラ負け。

2年連続のリーグ優勝に暗雲が立ち込めた。

その5日後。

2017年8月28日 ラン練 ＠広島大学陸上競技場

院試明けはじめてのラン練ということで、男は少しテンション高めであった。

プール前から陸上トラックへ向かう途中、飲み物を忘れたことに気づき、再びプール前に戻るその時であった。プール前の石段から飛び降りて、着地した瞬間、右足首に激痛が走る。

かろうじて歩けたので、まあすぐ直るだろうと思い、放っておくも、後日また痛みが再発したため病院へ行く。

右足首捻挫。3ヶ月は競技復帰できないと告げられる。

男は悲しみに暮れた。

せっかく院試が終わって、思いっきり練習ができるというのに。

2017年9月7日

「てか、インターンあるからってインカレ行かないとかマジ甘えだから。」

この日、彼が男に対して放った最初の一言は、衝撃的であった。

インカレ打ち上げの1次会が終わり、2次会の店へ向かう途中。

「俺は就活しながら練習してインカレ行ったんだから、インターンがあるってくらいでインカレ行かないのは、マジ甘えだわ。」

男はハッとした。確かにその通りである。

彼は今年、就活で忙しい中、自分なりに練習して、予選を突破し、インカレでもGullsトップの成績を残している。

それに対し男は、彼よりも圧倒的に練習時間が確保できたにもかかわらず、予選すら突破できなかった。

彼と男の差は歴然であった。

彼に対して“ぐうの音も出ない”とはまさにこのこと。

そんなぐうの音も出ない男は、二次会の店から出た直後に

「酒飲んだら捻挫直ったわ～」

と呟いた。

もちろん捻挫は直ってなかった。

男はたまにブログを書く。

ちょうど一年前のこの時期にHP係としての最後のブログを書いた。　※１

そのブログで男はこう綴っている。

『1年後の自分が「去年、悔しい思いをして良かった」と思えるよう、あと1年、悔いの残らないよう1日1日を大切にして過ごしていこうと思います。』

あれから1年経った。

結論から言うと、去年、悔しい思いをして本当に良かった。

仮に去年、予選を突破して、インカレでも納得いく成績が残せたとして、それから1年またインカレを目指して練習したであろうか。

少なくともこの1年インカレに向けて練習できたのは、まぎれもなく去年インカレに行けなかったのが1番の原動力である。

インカレ予選のサンポート高松のゴール後にあれだけ感情的になったのも、やはりこの1年努力したからであり、またこの1年Gullsのメンバーとして活動したからである。

もちろん、今年予選を突破できたら最高だったが、大学生の内にこんな貴重な経験ができたのは本当に良かった。

Gullsは今年「インカレ団体Top10」という年間目標を達成できなかった。

全国のレベルが年々上がっている中で、これからどう戦っていくのか。

先ほど登場した彼も主将を務めていた時によく言っていたが、1年間で結果を出すことは非常に困難である。実際に望み通りの結果が出るのは3年後かもしれないし、10年後かもしれない。ただ、その過程において我々の代ではどんなことができるのか、どんな目標ならこの1年以内に達成できそうなのか、といった長期的な目標を見据えた短期的な目標であれば、いくらでも考えることができる。

おとといセリーグ2連覇を成し遂げたカープも10年くらい前は本当に弱かった。リーグ優勝どころか、クライマックスシリーズ進出（リーグ3位以内）すら程遠かった。それでも、少ない資金の中、若手の育成などに力を入れ、去年ついに結果を出した。

カープファン以外の人には申し訳ないが、Gullsもカープのようになってほしい。時間がかかってもいいから、いつか結果を出してほしい。

男は大学院に合格したため、あと2年半チームに関われる。そしてインカレに行くチャンスもあと2回ある。

今は怪我により、まともに運動ができないが、少しでも早く復帰して、チームに関わり、そして個人的な目標を来年もしくは再来年、達成したい。

未完成さ！！そう僕は！！

未完成なんだみんな！！

生きる限り日々努力してその度に学んで七転び八起き

もしも僕が明日死んでも何かココに残せるような

そんな人間になりたいありたいって思いながら

日々生きてる

100点じゃないこの僕に100点つけるのは

他でもない僕自身だ！！それ以外どうだっていいんだ！！

人は人の姿に涙こぼしたり

So 勇気だって…もらって生きてるんだ！！

大切なのは自分が自分であること

©ONE OK ROCK 「未完成交響曲」

Gullsの物語は、いまだ未完成。。。